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Amali e l’Albero

2021.11.24

これは難民の女の子と、ある大きな木の心の交流のものがたり。日本ではなかなか実感しづらいが欧州では深刻な難民の方々のこと。

難民の人は思います。「一体自分が何をしたというのでしょうか?」ぜひ読んでいただけたらと思えるお話です。

・・・
心無い噂話で「あれは呪いの木だ。近寄ると石にされてしまうぞ」と町で忌み嫌われる大きな木に主人公の女の子は自分を重ね合わせます。

彼女は優しく木に触れ、そして木の話を聞いて、思い出します。

遠い国にいた自分のことを・・・
船の上の父の言葉を・・・

「見てごらん。空を見てごらんアマーリ。空は一つしかない。そして世界中の全ての国を包み込んでいる。それから星を、木を見てごらん。星も木も、みんなの頭の上で同じように輝いているだろう」

—あらすじ—

葉と枝を無くした木は恐れられていた。
木はただ、また枝に葉を付けたかっただけなのに。

「僕の枝と葉っぱを知りませんか?」
木はただそう尋ねるだけ。

「あの木の言うことに耳を傾けてはいけないよ。石にされてしまう」
そう言って人々は木をおそれ、話を聞こうとしないのです。

ただ、アマーリだけは別でした。遠い国からやってきた女の子。

「ぼくの居場所がわからないんだ」
そうして泣く木を見て、アマーリは母の顔を伝う透明な涙を思い出した・・・

あの夜、船に乗って海のしぶきと混じり合った塩辛く苦いあの涙。

アマーリは自分がいた故郷を思い出す。
そこは暑く、風がカカオの香りを運んできた。犬や山羊と走り回っていたあの日々を思い出す。

アマーリはそれから今暮らすこの町を思い出す。雪の降る音、新しい食べ物の味。ここで出来た新しい親友のサラのこと。

そして父を思い出す。あの夜船の上でアマーリにささやいたこと。

「見てごらん。空を見てごらんアマーリ。空は一つしかない。そして世界中の全ての国、全ての場所を包み込んでいる。それから星を、木を見てごらん。星も木も、みんなの頭の上で同じように輝いているだろう」

・・・泣いている木と出会ったその夜、アマーリは夢を見た。カカオで香る雪の降り注ぐ夢を見た。

翌朝、枝と葉を失った木はもういなかった。その代わり、窓の目の前には葉と花の咲き乱れる枝が伸びていた。


—本文から—

Amali uscì di casa a piedi scalzi.
アマーリは裸足で家を出た。

Si avvicinò e toccò delicatamente il tronco.
木に近寄り優しく触れた。

L’Albero ebbe un fremito, non si ricordava più la morbidezza di mani gentili.
木は震えた。そのような親切な手のやわらかさをもう随分忘れていたのだ。

Perché piangi? chiese Amali.
「どうして泣いているの?」アマーリは尋ねた。

Sono triste. rispose l’Albero.
「僕は悲しいんだ」木は答えた。

Ho perso le mie radici. ripeté l’Albero. e non so qual è il mio posto.
「枝を無くしてしまって」木は繰り返した。
「だから、自分の居場所がわからないんだ」

Il cielo è uno solo e abbraccia tutti i posti e tutti i paesi del mondo. Guarda le stelle, Albero, brillano allo stesso modo sopra le testi di tutti.
「空は一つしかない。そして世界中の全ての国、全ての場所を包み込んでいる。それから星を、木を見てごらん。星も木も、みんなの頭の上で同じように輝いているだろう」

Quella notte Amali sognò neve al profumo di cacao.
その夜アマーリはカカオで香る雪の夢を見た。

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Amali e l’Albero
『アマーリと木』(仮題)

Chiara Lorenzoni
キアラ・ロレンツォーニ作

Paolo Domencioni
パオロ・ドメンチョーニ 絵

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